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静岡の大地(その5)静岡県の河川と湧水


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写真:筆者

青池(藤枝市緑町) 六角形の枠の切れ目から湧水が流れ出ている。

 2018年8月に静岡県河川砂防局から発表された『しずおかの河川と海岸』は、B1版一枚の両面カラー印刷で、たいへんよく静岡県の水環境を説明している。
 その「静岡県の概要」には、静岡県の大地の基本がある。それによると、静岡県は東西に155km、南北に118km、面積7,780㎢でこれは全国で13位、人口366万人でこれは全国で10位である。また、富士山や南アルプスの3,000m級の山々があり、深さ3,000m以上の駿河トラフがある。年平均気温は摂氏16.5度、年平均降水量は約2,300mmである。浜名湖、世界文化遺産の富士山、伊豆半島ユネスコ世界ジオパークなど、豊かな自然があり、屈指の観光県ともなっていると紹介されている。
 「静岡県の河川」では、一級河川が6水系268河川、二級河川が83水系265河川である。総延長2,863kmで、全国第7位である。南アルプスや富士山があり、南へ流れる河川には急流河川が多く、海岸に沿って東西に流れる河川には排水が困難な緩勾配の河川もある。したがって水害が多く、各地で古くから治水事業が行われてきた。そこで、今後10年間の河川整備の方向性が示されている。
 「静岡県の海岸」では、静岡県は、伊豆半島、駿河湾、遠州灘という3つの沿岸からなり、総延長約506kmで、東西に長く、変化に富むと紹介されている。外洋に面しており、高潮や高波の影響を受けやすく、また大河川からの土砂供給の減少などで砂浜の侵食への対応、津波への対策などが課題とされる。

上:静岡県河川砂防局出版による「しずおかの河川と海岸」表紙
下:同上による藤枝市と周辺の地図(部分、原図に瀬戸川の文字を大きく加筆)
  青と紫:一級河川、緑:二級河川。瀬戸川流域に藤枝市内の湧水が分布する。

一方、静岡県には湧水地が多く知られており、環境省の『昭和の名水百選』では、駿東郡清水町柿田川湧水群が、『平成の名水百選』には、静岡市安倍川、浜松市阿多古川、三島市源兵衛川、富士宮市湧玉池・神田川が指定されている。
 また、環境省の水・大気環境局では、「流域全体を視野に入れた水環境の保全に向けた総合的な施策を取り組むとともに、有害物質による土壌や地下水の汚染という負の遺産を将来世代に残さないため、土壌汚染の防止や、農薬の安全評価、土壌・地盤環境の再生に取り組んでいます」として、湧水に関するサイトを作っている。そこでは、全国の都道府県・市区町村を対象に、令和2年度に実施した「湧水保全に係る情報調査」で、各自治体が把握している湧水のうち、各自治体が「代表的な湧水」と考えている湧水を掲載している。代表的な湧水に関する情報項目は、湧水の名称、所在地、概要等、アクセス制限、湧水保全活動で、市区町村が回答している。
 湧水は、古くから生活用水や農業用水として大切に使われてきており、中小河川の水源となっているものもある。また、都会にある湧水は人びとにとってうるおいとやすらぎの場を提供する。近年、湧水は、水量の減少、水質の悪化が指摘され、湧水周辺の土地改変などによって、枯渇し、消失している例もある。湧水を脅かす要素には、かん養域における都市化の進行、過剰な揚水、地下水の汚染、湧水周辺のごみの散乱などがある。
 そのサイトで紹介されている静岡県の湧水地は多く、浜松市9、沼津市2、島田市1,熱海市1、三島市8、富士宮市2、伊東市1、富士市12、磐田市5、焼津市3,掛川市4,藤枝市7、御殿場市3、裾野市2、伊豆市1、伊豆の国市5、下田市1、御前崎市2、河津町4、松崎町2、清水町1、小山町5、川根本町2となっている。

 今回は、青島酒造見学の続きとして、藤枝市の湧水を取材した記録である。静岡県のウェブサイト「ふじのくに」に『静岡県の湧き水』というページがある。「恵み豊かな水資源を保全・継承していくことの大切さを実感していただくため、本県の身近な湧き水を紹介します」として、藤枝市の7か所の湧水も紹介されている。それぞれに興味深い説明が付いており、そこに問い合わせ先とある藤枝市生活環境課(054-643-3681)に電話して、車で行く場合のくわしい地理を教えていただき、8月8日(日)に訪ねてみた。

 湧水は、水が地中から自然にわき出ているところのことで、「湧泉」とも、また「泉」とも呼ぶ。人とのつながりでは「泉」、物理現象としての説明では「湧水」が使われる場合が多い。世界中、泉に関連して名づけられた地名が多い。泉を御神体とする寺院もある。

湧水のすぐにたひらや栗の花  辻 桃子
泉ありいづれの堂も遠からず  森田 峠

【元井戸】
 まず、藤枝市音羽町2丁目の元井戸(もといど)である。瀬戸川左岸、川沿いの道を進み、金吹橋東側を北に行くと河原でキャンプを楽しむ人たちがいる。少し広くなっている場所に停車して歩く。一段下がった窪地にあるのが湧水地である。飽波(あくなみ)神社大祭の華、山車を支える木製の車輪が水中に沈めてある。3年に一度の晴れ舞台を待っているという。水は澄んでいて沈められた車輪がよく見え、小魚や手長海老が泳いでいる。流れ出た水は小さな流れを作っており、その流れに石菖(セキショウ)が茂っている。水がきれいな証拠である。

底に山車の車輪がある(重石が上に乗っている)

手長海老の姿も見られた

 新元井戸(しんもといど)は、金吹橋東側を川沿いに下ったすぐのY字交差点にある。道路から低い位置にあるため池に降りるには隣家を通らないといけないというので省略したが、説明によると、上流側の元井戸と同様に、飽波神社大祭の華、山車を支える車輪が水中にいけられ、3年に一度の晴れ舞台を待つという。
【馬上の清水】
 馬上の清水(ばじょうのしみず)は、田中城跡近くの御成街道沿いに位置している。この場所は、駿河に隠居した徳川家康が、鷹狩の際に藤枝を訪れた出来事に由来している。かつて武田信玄、勝頼軍と激戦を繰り広げた田中城を訪れた家康である。喉が渇いたために従者に道端にあった井戸から水を汲ませ、馬に乗ったままそれを飲み、「甘水飲むべし」と言って喜んだというのが、呼び名の由来である。

鳥除けの網が張ってあり、立派な錦鯉が泳いでいる。

【姥ヶ池】
 藤枝市立花にある姥ヶ池(うばがいけ)である。別名ひょうたん池とも呼ばれる。藤枝市指定史跡のこの池には、飽波神社の山車や田中神社のちょうぼろ(山車)の大輪が沈めてある。大輪にはそれぞれの町内の名札が付いている。水量は小さな小川をつくるほど豊富で、飲料水には出来ないものの小魚や錦鯉が悠々と泳いでいる。

錦鯉が泳ぎ、山車の車輪が沈められている。

【牛池】
 藤枝市緑町の牛池(うしいけ)は、旧国道1号線に面した藤枝警察署そばの青池公園の西側にある。瀬戸川伏流水湧水群の1つで、道路より低い場所に位置しており、トイレのある広場から池を見渡せるデッキに降りるようになっている。青池と並んであるため別の池とはわかりにくいが、牛池という別の池なのである。

藤枝警察署の横にあり、青池の隣。公園内からデッキに降りられる。

【青池】
 そして、最後の訪問地が牛池の隣の青池(あおいけ)である。藤枝警察署側の青池公園内にある。園内には、ビオトープが整備され、桟橋の上を歩いて散策できる。旧国道沿いで車通りが多く静かではないが、地域の人びとに親しまれている。池の中に六角形の枠があり、そこが湧水の場所で、枠からの出口に流れが見える。それが大きな池をなしているのである。

青池公園から見る。青池では生態系を守る活動が行われており、ブラックバスなどの外来魚、コイやナマズなど肉食魚の放流が禁止されている。ミソハギ、オモダカ、コウホネ、ヒツジグサなどがあり、木道から観察できる。

 藤枝市岡部町宮島に清水屋の湧き水(しみずやのわきみず)というのがある。「玉露の里」から車で10分で、民家の敷地内に湧き出る清水であるというので、今回は省略した。お茶によく合う湧水だという。くせのないまろやかさが評判で、噂を聞きつけて県内のさまざまな地域の人びとが水を汲みに来るという。お茶会に使われることも多い。道路に面した場所と裏山の2か所から湧き出ているという。

藤枝市の湧水分布図:1 元井戸 2 鮑波神社 3 牛池 4 青池 5 姥ケ池 6 田中城址 7 馬上の清水 8 静岡県立焼津中央高

 藤枝市の郷土博物館・文学館のウェブサイトには、史跡田中城下屋敷のページがあり、そこに田中城址と湧水の関係がよくわかる資料が掲載されている。その説明によると、「江戸時代後期、田中藩主・本多家の庭園であった下屋敷は、城の南東隅にあたり、築山・泉水・茶室も設けられて、四季の草花や月見の名所として知られていました。庭園跡を史跡公園として整備をすすめ、田中城ゆかりの建築物(市指定有形文化財4件)も移築・復元し公開しています」とある。その付録には詳しい地図(下記)があり、現在の町と湧水、田中城址の位置関係もよくわかる。

 同じウェブサイトには、長者の娘、賀姫(いわいひめ)に惚れた青池の大蛇の伝説も載っている。大蛇は賀姫に一目惚れして、青年に化けて賀姫を池に引き込んだ。長者は怒り、石や鉄を焼いて池へ投げ込み、青池の水が煮え湯となった。娘の仇を討った長者は、屋敷を寺とした。長楽寺の由来である。
 また、瀬戸川を渡って焼津市側にある静岡県立焼津中央高等学校は、1979(昭和54)年4月1日、静岡県教育委員会から「静岡県地震予知観測学習モデル校」に指定された9校のうちの1校である。筆者は当時の山本敬三郎静岡県知事の顧問として、その事業のための観測機材を提供し、観測学習の指導のため何度か訪れたことがある。この事業は20世紀末まで継続され、筆者はたびたび各地を訪れる機会を得た。観測項目の中には、井戸を用いた地下水の水位変化も含まれており、年報の形で教育委員会から出版されている。

藤枝市郷土博物館・文学館の資料より(部分)(13:姥ヶ池、20:馬上の清水)

 藤枝の湧水訪問記をまとめるにあたって、場所の確認から資料の収集と案内まで、宮原亜砂美さんにたいへん働いていただき、また、多くの助言をいただいた。記して謝意を表する。

湧水へ長き石積み小鳥来る  和夫
おはやうといつもの列や冬泉


下記は、大学外のサイトです。

藤枝市郷土博物館・文学館
https://www.city.fujieda.shizuoka.jp/kyodomuse/1/2/1445916637952.html

静岡新聞「まんが静岡のDNA」の記事でも静岡の大地を紹介しました。
https://www.at-s.com/news/article/featured/culture_life/kenritsudai_column/700397.html?lbl=849https:/

参考文献
静岡県河川砂防局『しずおかの河川と海岸』
三浦泰二『手づくり地震予知研究 静岡県の高校で』
静岡県教育委員会『静岡県地震予知観測学習モデル校調査年報』
尾池和夫他「東海地域における地震予知観測の方法について」京大防災研究所年報(1981年)

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