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薬草園歳時記(12)里芋の芋と花と実と 2021年12月


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里芋の果実(薬草園提供)

 里芋(サトイモ科サトイモ属【学名:Colocasia esculenta】)は、別名小芋(コイモ)、タロイモ、タイモイエツイモ、ツルノコモ、ハスイモ(蓮芋)、ハタイモ(畑芋)、ヤツガシラ(八つ頭)などと呼ばれ、東南アジアが原産地である。和名の里芋の由来は、山地に自生していた山芋に対し、里で栽培されることからとされている。英語では taro(ターロゥ:タロイモの意)、eddo(エドゥ:タロイモやサトイモの意)、dasheen(ダシン:サトイモ属 Colocasia を表わす同義語)などと呼ばれ、フランス語では colocase(コロカーズ)または taro(タロ:タロイモの意)と呼ばれる。学名の Colocasia は、ギリシャ語の「食物」を表す “colon” と、「装飾」を表す “casein” を合成した言葉が語源となった。

 花色は黄色。開花時期は8月~9月。タロイモ類の仲間で、茎の地下部分と、葉柄を食用にする。葉柄は芋茎(ズイキ)と呼ばれる。

 静岡県立大学の薬草園で栽培している里芋の品種は白芽、赤芽、筍芋である。筍芋(京芋)は宮崎県の特産で、別名の京芋は京都の海老芋(京芋)のように美味しい里芋であるというので付けられた別名であろう。

 里芋の花は、花の咲く前の芋を収穫するため畑では見かけない。薬草園では芋を収穫する目的はないので花が見られた。里芋の花の花言葉は、「繁栄」「愛のきらめき」「無垢の喜び」である。

 普通のサトイモの葉柄は、シュウ酸カリシウムが多く含まれるため、生のままではもちろん、湯がいてもアクが強くて食用にならない。葉柄を食べるのは、ヤツガシラなど、葉柄にアクが少ない品種が利用される。食用にできる葉柄は「ずいき」とか「いもがら」と呼ばれる。「赤ずいき」はヤツガシラなどの葉柄、「青ずいき」はハスイモ(蓮芋、葉柄専用品種)の葉柄が主である。里芋は成長した茎の下部が親芋となり、その周りを囲むように子芋が生じ、さらに子芋には孫芋がついて増える。

 親芋も子芋も茎も、すべて食べることができる里芋の代表的な品種がヤツガシラである。小芋や孫芋だけを食べる石川早生や土垂(ドダレ)の緑色の茎に比べ、セレベスと同じように茶色の茎になる。加賀野菜「赤ずいき」は繊維質でヘルシーであり、いろいろな料理に合う。赤ずいきの産地は、金沢市花園地区三馬地区である。

 里芋は、熱帯、亜熱帯地域の東南アジア原産の多年生草本で、日本には縄文時代後期に中国から伝来したと言われている。里芋は食べる部位によって、子芋を食用とする品種、親芋用品種、親子両方を食用にする親子芋兼用品種、芋がら(ずいき)を食用にする葉柄品種の4つの品種系統に分類される。このうち、親芋子芋兼用品種のトウノイモ(唐芋)と、親芋用の品種のヤツガシラが「赤ずいき」と呼ばれ、その葉柄はお盆や秋祭り、法事の時などに食用とされている。赤ずいきの酢の物は、すっきりとして口当たりも良く、田舎料理として親しまれる。「ずいき」の起源は、南北朝の頃、臨済宗の僧夢窓国師疎石の歌に「いもの葉に置く白露のたまらぬはこれや随喜の涙なるらん」からであると伝えられる。

 日本の里芋は花を咲かせないと言われているが、実際には着花する。着花する確率は品種間の差が大きく、毎年開花するものから、ホルモン処理をしてもほとんど開花しないものまでさまざまである。着蕾した株では、その中心に葉ではなくサヤ状の器官が生じ、次いでその脇から淡黄色の細長い仏炎苞を伸長させてくる。花は仏炎苞内で肉穂花序を形成する。着果はほとんど見られないが、種子はウラシマソウなどと比較してかなり小さい。ウラシマソウ(浦島草、学名: Arisaema urashima)は、サトイモ科テンナンショウ属の宿根性の多年草である。

ウラシマソウの花と実

 里芋を洗うと手が痒くなる。茎や球茎にシュウ酸カルシウムの針状晶が含まれているためで、球茎の皮の下2、3ミリメートルにある細胞の中に多くのシュウ酸カルシウム結晶が含まれており、大きな結晶が僅かな外力によって壊れて、針状結晶へ変わり外部へ出る。芋を洗うとき皮膚にこの針状結晶が刺さって痒くなる。手のかゆみを防ぐには、手袋を用いるか、手に重曹や塩をまぶす。剥く前に沸騰した米のとぎ汁で茹でると簡単に剥ける。

 里芋は若い時期からシュウ酸カルシウムを針状晶や細かい結晶砂として細胞内に作り始める。これらが集合して、大きな結晶の固まりとなる。シュウ酸カルシウムは「えぐ味」の原因ともなり、えぐ味はシュウ酸カルシウムが舌に刺さることによって起きるとする説、化学的刺激であるとする説、他にもタンパク質分解酵素によるとする説がある。昆虫から身を守るために、このようなものを作り出していると考えられている。

ハスイモ(左)とクワズイモの花(右)

 ハスイモというのがある。私の育った高知県の名物で、産地は高西地区、土長地区、安芸地区などである。土佐の郷土料理にもよく使われ、高知県では「りゅうきゅう」と呼ばれる。しゃきしゃきした食感が特徴で、茎の部分のみを食べる里芋の種類で、独特の食感を活かした野菜である。田舎寿司にも使われる。露地栽培を中心に、冬春期のハウス物とあわせて周年生産している。切り口から酸化して赤くなるのでなるべく早めに使い、冷蔵庫の野菜室に入れる。野菜としては全国的ではないが、高知県、徳島県では普通に和え物、煮物、みそ汁などで食べられている。太刀魚またはナイラゲ(カジキマグロ)と酢の物にするのが私は好きである。旬は夏から秋にかけてである。名前の由来は沖縄(琉球)から伝わったことにちなんで名付けられたといわれているが、諸説あり定かではない。

 ハスイモは、クワズイモ属のインドクワズイモ(Alocasia macrorrhizos)に、さまざまな点で類似しており、里芋とインドクワズイモとの自然交雑により発生した可能性が指摘されている。インドクワズイモはベトナム山地部でブタの飼料として採集され、インドでは、水で晒して救荒食として利用することがある。クワズイモは日本で主に観葉植物として栽培されており、葉の形が里芋や蓮芋と似ているために誤って食べ、食中毒を引き起こす例が多く、厚生省が注意を呼びかけている。中国、ベトナムでは薬用として用いられることもある。

ハスイモ(左)とクワズイモ

芋の露連山影を正しうす    飯田蛇笏

 この句は、大正3年(1914年)11月、『ホトトギス』巻頭の句で、飯田蛇笏の代表句ともされる。

不喰芋はびこるのみぞ夏近し   和夫
単線の両側にあり芋畑
芋の露大きくなりぬ震度三

 薬草園の山本羊一氏には毎回、貴重なご意見をいただいている。毎年12月には薬草園で拾い集めた材料で山本氏が見事なリースを製作して届けてくれる。それが今、学長室の入り口とはばたき棟ラウンジの壁を飾っている。

薬草園から届いたリース

尾池 和夫


薬学部の薬草園サイトはこちらからご覧ください。
https://w3pharm.u-shizuoka-ken.ac.jp/~yakusou/Botany_home.htm

キャンパスの植物は、食品栄養科学部の下記のサイトでもお楽しみいただけます。
https://dfns.u-shizuoka-ken.ac.jp/four_seasons/

下記は、大学外のサイトです。

高知県立牧野植物園「くらしの植物教室 「食から知る~りゅうきゅう~」」
https://www.makino.or.jp/event/detail.php?id=437

静岡新聞「まんが静岡のDNA」の記事でも薬草園を紹介しました。
https://www.at-s.com/news/article/featured/culture_life/kenritsudai_column/742410.html?lbl=849

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