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マグネシウムイオンが筋幹細胞を活性化 -骨格筋の再生促進による健康長寿延伸に期待-


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薬学部統合生理学分野の原雄二教授、平野航太郎助教のグループは、骨格筋の再生を担う筋幹細胞(筋衛星細胞)におけるマグネシウムイオンの流入が筋衛星細胞の活性化を誘導する最初のステップとなり、筋再生を引き起こすことを見出しました。本成果は、『Science Advances』電子版に2025年4月4日付で掲載されました。

私たちの体は骨格筋の働きによって運動することができますが、骨格筋を構成している筋線維はたえず物理的な負荷に伴う損傷を受けており、継続的な筋機能の維持のために筋線維を修復・再生する必要があります。骨格筋に存在する幹細胞(筋衛星細胞)は、筋損傷時に活性化され、筋線維の修復・再生を引き起こしますが、筋衛星細胞の活性化をもたらす機構は明らかではありませんでした。
今回、平野航太郎助教、薬学科卒業生・中林千華さん、薬学科5年生・佐々木万緒さんらは、筋衛星細胞内部へのイオン流入機構に着目し、TRPM7とよばれるイオンチャネルが筋衛星細胞の活性化を誘導し、筋線維再生に重要な役割をはたすことを明らかにしました(概要図)。遺伝子改変マウスの作出・解析の結果、Trpm7欠損マウス由来の筋衛星細胞は活性化を誘導できず、筋線維の再生が著しく損なわれました。さらにTRPM7イオンチャネルはマグネシウムイオンを細胞内に流入させることで、筋再生をつかさどる情報伝達経路を活性化させることを明らかにしました。
骨格筋の再生不良は筋ジストロフィーなどの骨格筋疾患の発症にも関連するだけでなく、筋線維の機能維持を通じて私たちの生活の質の維持にも大きく関与しています。本研究成果をもとに、TRPM7イオンチャネルやマグネシウムイオンを標的とした創薬研究が進展することで、加齢に伴う筋機能低下の予防や治療による健康寿命の延伸につながるものと期待されます。

研究内容のポイント

  • 骨格筋の再生にはTRPM7イオンチャネルが必要であることを発見しました。
  • TRPM7を介したマグネシウムイオンの細胞内への流入が、骨格筋幹細胞の活性化に関わる様々な応答をもたらすことを明らかにしました。

掲載論文

Kotaro Hirano, Chika Nakabayashi, Mao Sasaki, Miki Suzuki, Yuta Aoyagi, Kaori Tanaka, Akira Murakami, Masaki Tsuchiya, Eiji Umemoto, Shuji Takabayashi, Yasuo Kitajima, Yusuke Ono, Takehisa Matsukawa, Masayuki Matsushita, Yasuyuki Ohkawa, Yasuo Mori, & Yuji Hara
Mg2+ influx mediated by TRPM7 triggers the initiation of muscle stem cell activation
Science Advances, 11(14): eadu0601. DOI: 10.1126/sciadv.adu0601.

論文URL

https://www.science.org/doi/10.1126/sciadv.adu0601(外部サイトへリンク)

概要図

TRPM7によるマグネシウムイオン流入が、骨格筋幹細胞の活性化を介して筋線維の修復・再生をもたらす

概要図

お問い合わせ

静岡県立大学薬学部 統合生理学分野 
原 雄二
電話: 054-264-5733
E-mail: yhara(ここに@を入れてください)u-shizuoka-ken.ac.jp
平野 航太郎
電話:054-264-5736
E-mail: hirano_k(ここに@を入れてください)u-shizuoka-ken.ac.jp

(2025年5月12日)

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