グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



伊豆半島東部のマグマ活動の推定に成功(共同プレスリリース)


ホーム >  ニュース >  伊豆半島東部のマグマ活動の推定に成功(共同プレスリリース)

静岡県立大学グローバル地域センター
統計数理研究所
伊豆半島ジオパーク

伊豆半島東部のマグマ活動の推定に成功 ~手付かずだった地下深くで起きる地震の解明が鍵を握る?〜

静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門の楠城一嘉特任教授、東京大学地震研究所の行竹洋平准教授、統計数理研究所の熊澤貴雄特任准教授の研究グループは、伊豆半島ジオパーク学術研究助成(美しい伊豆創造センター)を得て研究を実施し、伊豆半島東部で起きる地震のデータ処理に基づきマグマ活動の推定に成功しました。伊豆半島東部の観測体制拡充に貢献する可能性を持った基礎研究である点で、火山防災上、重要です。この成果は2025年5月15日(日本時間)に学術専門誌『Journal of Volcanology and Geothermal Research (ジャーナル・オブ・ボルカノロジー・アンド・ジオサーマル・リサーチ)』の電子版へ掲載されました。

本研究のポイント

伊豆東部火山群(参考1)がある伊豆半島東部の最近の主なマグマ活動は、マグマの貫入によると考えられる、2006年4月と2009年12月に始まった群発地震である(図1)。群発地震の発生域は深さ0-20kmだが、その直下で起きる、ゆっくりとした揺れを生じる特殊な地震(低周波地震: LFE(エルエフイー))の発生域は深さ30-40kmである。これまで未解明の伊豆半島東部のLFEに着目した本研究は、群発地震とLFEから浅部と深部のマグマの活動が推定できることを示した。詳細は以下の通り。
  • LFEの規模は小さくまた低周波であるが故に、揺れのデータに含まれるノイズに埋没して地震動と認識されないLFEがある。雑音の中から地震動を検知するマッチドフィルタ法を導入し、2005〜2020年に伊豆半島東部地域の20観測点で記録した揺れのデータの中から、気象庁が観測したLFEの波形と調和する波形をデータ処理で抽出した。雑音に混じるなど、気象庁が観測していないLFEも拾うことができたためLFEを894回検知し、気象庁の観測回数(47回)の約19倍であった(図2)。
  • LFEの活動度を評価・予測できるイータス法を導入して、2009年の群発活動が収束した後にLFEが静穏化することを見出した(図3)。同様の静穏化が2006年の群発地震でも見られた。浅い群発活動が収束したのちに深いLFEが静穏化することは以下で説明できる。地下にあるマグマだまりからマグマが地殻浅部の亀裂に入り込み(貫入し)群発地震が起き、またマグマだまりからマグマが出たのでマグマだまりの浅部が減圧する。その影響がマグマだまりの深部に及び、マグマだまり深部でも遅れて減圧しマグマだまりの深部の周辺の地下にかかる力が減少してLFEが静穏化する。

本記事を読まれる皆様へ

  • 2009年の群発地震以降、火山・地震活動は低調ですが、今後必ず活発な時期は来ますので、いつ活発になっても対応できる様に、改めて防災意識が高まるきっかけになれば良いと思います。
  • 直接見られない地下のマグマ活動を推定する指標の一つにLFEがなり得ることを示した本研究は、伊豆東部火山群の観測体制拡充に繋がる基礎研究です。今後は東京大学地震研究所・統計数理研究所と研究を深化させ、例えばLFEをリアルタイムで観測する仕組み作りを進めたいと思います。
  • 伊豆半島に火山があるおかげで、地下水が温められて温泉が沸き、また溶岩などの噴出物が美しい景観を持つ地形を作りました。地域の人々はそれらを生かし温泉地、観光地として活用した歴史があり、自然の恵みをいかす独自の文化は今後も継承されるでしょう。そのためにも、火山のもう一つの側面が突然の災害を引き起こす要因になりえることを熟知し、防災を進めることは今まで以上に求められているという背景の下で研究を実施しました。これは伊豆半島ジオパークの理念と通じるものがあります。「静岡にある県立大学だからこそ」の地の利を生かし、地元の同ジオパークと連携して、伊豆半島の火山防災研究・啓発を進めていきます。

掲載された論文

<論文タイトル>
Changes in seismicity in a volcanically active region of the Izu Peninsula, Japan
<著者>
•静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門 特任教授 楠城一嘉
•東京大学地震研究所 准教授 行竹洋平
•統計数理研究所 特任准教授 熊澤貴雄
<掲載学術誌>
Journal of Volcanology and Geothermal Research, 第465巻, ページ番号108355
ウェブ:https://doi.org/10.1016/j.jvolgeores.2025.108355
日本時間:2025年5月15日に出版

関連リンク

◎Journal of Volcanology and Geothermal Research (英語)
https://www.sciencedirect.com/journal/journal-of-volcanology-and-geothermal-research

◎論文のページ (英語)
https://doi.org/10.1016/j.jvolgeores.2025.108355

◎静岡県立大学グローバル地域センター
https://www.global-center.jp

◎静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門
https://shizuoka-earth.org

◎東京大学地震研究所
https://www.eri.u-tokyo.ac.jp/

◎統計数理研究所
https://www.ism.ac.jp/

◎美しい伊豆創造センター
https://office.b-izu.com/

◎伊豆半島ジオパーク
https://izugeopark.org/

参考


図1. 伊豆半島東部のLFEが地下深くで起きていることを示す図。a, 黒枠はbの領域を示す。b, 研究領域を黒枠で示す。気象庁が2005年1月〜2020年12月に観測したLFE(マグニチュードM≥0.1)とLFE以外の通常の地震(M≥1)をそれぞれ赤印と黒印で示す。2006年と2009年の群発地震を起こしたマグマ貫入と関連する変動があった位置を、それぞれ橙色と青色で示す。三角は手石海丘(1989年の海底噴火により形成された火山)の位置を示す。c, bの断面図。


図2. 本研究で多数のLFEを観測したことを示す図。赤印は、図1bの研究領域で気象庁が観測したLFEのMと時間を示す。ピンク印は、本研究で観測したLFEのMと時間を示す。群発地震のタイミングを橙色と青色の縦線で示す。


図3. LFEの静穏化を示す例。本研究で観測したLFEを用いた。この図では、2005年1月〜2020年12月のM≥0.3のLFEの累積頻度の時間変化を”観測”と呼ぶ(黒色の線)。LFEの活動度を評価・予測できるイータス法を用いて、2005年1月1日(一本目の縦線)から2009年の群発地震が収束した後の2012年7月4日(2本目の縦線)まで観測を評価し、評価結果をもとに、その後を”予測”したものを赤色の線で示す。観測は予測より下方に逸れており(下向きの矢印)、静穏化を示す。下パネルはLFEのMと時間を示す図。

お問い合わせ

グローバル地域センター 楠城 一嘉
電話:054-245-5600
E-mail:nanjo(ここに@を入れてください)u-shizuoka-ken.ac.jp

(2025年5月26日)

モバイル表示

PC表示