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地震データで火山の「信号機」 ―噴火の切迫度を準リアルタイムで評価―(共同プレスリリース)


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地震予知総合研究振興会地震調査研究センター
静岡県立大学
東北大学
京都大学
キンシャサ大学

地震データで火山の「信号機」 ―噴火の切迫度を準リアルタイムで評価― 〜性質の異なる世界の火山で初めて系統的に検証、衛星観測と同等の的中率〜

公益財団法人地震予知総合研究振興会地震調査研究センター副主任研究員 Thystere Matondo Bantidi (ティステール・マトンド・バンティディ)、静岡県公立大学法人静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門特任教授 楠城一嘉、同振興会地震調査研究センター主任研究員 石辺岳男(現在気象庁地震火山部地震津波監視課地震津波監視・警報センター技術専門官)、国立大学法人東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻教授 西村太志、国立大学法人京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地球物理学教室准教授 Bogdan Enescu (ボグダン・エネスク)、キンシャサ大学理学部物理学科准教授 Anscair Mukange Besa (アンスケール・ムカンゲ・ベサ) (コンゴ民主共和国)の国際共同研究グループは、地震活動の統計量「b値」の変化を緑・黄・赤の信号機に置き換え、火山の地下にたまる応力の状態と噴火の切迫度を準リアルタイムで評価する手法「火山信号機警報システム(VTLAS: ブイトラス)」を開発しました。本手法を地質環境の異なる世界の火山で系統的に検証したのは世界で初めてです。
特に本研究では、世界の火山の地震カタログを解析することにより、
  • 「b値の低下を『赤信号』とみなすと、その約39%が10日以内の噴火に先行し、衛星観測(InSAR等)など他の前兆指標と同等の的中率が得られること」
  • 一方で、「水蒸気噴火など前兆地震に乏しい噴火は捉えにくく、b値だけに頼らず複数の観測を組み合わせる必要があること」
を示しました。
この論文は2026年7月6日(日本時間)付で、英ネイチャー・ポートフォリオの学術誌「Scientific Reports(サイエンティフィック・リポーツ)」電子版に最終掲載(版面確定版)されました(オープンアクセス)。

概要

論文 Near real-time b-value analysis for volcano traffic light alert systems and eruption forecasting
著者
  • Thystere Matondo Bantidi|地震予知総合研究振興会地震調査研究センター副主任研究員
  • 楠城一嘉|静岡県立大学グローバル地域センター自然災害研究部門特任教授
  • 石辺岳男|同振興会地震調査研究センター主任研究員(現在気象庁地震火山部地震津波監視課地震津波監視・警報センター技術専門官)
  • 西村太志|東北大学大学院理学研究科地球物理学専攻教授
  • Bogdan Enescu|京都大学大学院理学研究科地球惑星科学専攻地球物理学教室准教授
  • Anscair Mukange Besa|キンシャサ大学理学部物理学科准教授(コンゴ民主共和国)
掲載誌 Scientific Reports (サイエンティフィック・リポーツ)
https://doi.org/10.1038/s41598-026-50913-4
研究のポイント
  1. 地震活動の統計量「b値」から、火山地下の応力の状態を評価|小さな地震が多く大きな地震が少ないほどb値は高く、地下の応力は低いと解釈されます。逆にb値が低下すると、地下で応力が高まっているサインと考えられます。本研究はこの変化を緑・黄・赤の信号機に対応づけ、噴火の切迫度を準リアルタイムで示す「VTLAS」を提案しました。
  2. 世界の火山で初めて系統的に検証|日本(霧島・御嶽・有珠)、アイスランド(ファグラダルスフィヤルほか3火山)、米国ハワイ島(マウナロア)という、地質環境の異なる火山を対象に(図1)、b値変化から警報の信頼性を検証したのは世界で初めてです。
  3. 既存の地震観測データのみで、衛星観測と同等の的中率|背景値からのb値の低下が10%を超えた時点を「赤信号」とすると、その約39%が10日以内の噴火に先行しました。これはInSAR(合成開口レーダー)やGNSS(地殻変動)、熱異常など他の前兆指標を用いた研究と同等の的中率であり、新たな観測機器を設置せずとも、各国が日常的に取得する地震カタログだけで実現できます。ファグラダルスフィヤル(アイスランド)の事例を示す図2aは「赤信号」を示した典型例です。
  4. 手法の限界も明確化(水蒸気噴火と多層監視の必要性)|日本の事例では、有珠山の2000年噴火で数日前に赤信号が点灯しました(図2c)。一方、御嶽山の2014年噴火ではb値の低下が約8%にとどまり、警報の基準(10%)には届きませんでした(図2b)。地下水や熱水が関与する水蒸気噴火は、マグマの上昇に伴う明瞭な応力変化を伴いにくく、地震活動からの把握が一般に難しいと考えられます。b値だけに頼らず、地殻変動・火山ガス・熱などの観測と組み合わせることが重要です。
著者達からのコメント
  • 火山の地下で何が起きているかを、新たな観測機器を設置しなくても、既にある地震データから準リアルタイムで読み取れることを示せました。
  • 「信号機」という直感的な表示にすることで、研究者だけでなく防災の現場でも判断材料として使いやすくなることを目指しています。
  • ただし、この手法だけで噴火を言い当てられるわけではなく、他の観測と組み合わせてこそ力を発揮します。
  • 今後さらに多くの火山で検証を重ね、世界の火山防災に役立てたいと考えています。
用語解説
  • b値|地震の規模別頻度分布(グーテンベルク・リヒター則)の傾き。小さい地震に対する大きい地震の相対頻度を表す。
  • VTLAS|火山信号機警報システム(Volcano Traffic Light Alert System)。本研究が提案した手法の略称。
  • 水蒸気噴火|地下水や熱水が高温のマグマに熱せられて急膨張することで起こる噴火。
参考

図1. 解析した火山の位置。(a)日本、(b)アイスランド、(c)ハワイ島。(c)のキラウエアは解析対象外で、参考として示す。


図2. b値によるVTLASの時系列の例。横実線で示す背景値より、横破線で示す10%のラインより低下した「赤(危険)」、±10%以内の「黄(注意)」、10%(横破線)以上高い「緑(平常)」で火山の状態を表す。赤い縦破線は噴火開始時。(a)ファグラダルスフィヤル(アイスランド)は典型例。3回の噴火の前に「赤(危険)」を示した。(b)御嶽、(c)有珠。

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