グローバルナビゲーションへ

本文へ

ローカルナビゲーションへ

フッターへ



パーキンソン病治療薬候補化合物「MF1」の第Ⅰ相臨床試験開始


ホーム >  ニュース >  パーキンソン病治療薬候補化合物「MF1」の第Ⅰ相臨床試験開始

パーキンソン病治療薬候補化合物「MF1」の第Ⅰ相臨床試験開始〜αシヌクレイン凝集を標的とする新規化合物、安全性および薬物動態の評価へ〜

静岡県立大学薬学部所属の川畑伊知郎教授が開発した、パーキンソン病をはじめとするシヌクレオパチーを対象とする新規治療薬候補化合物「MF1」について、ヒトへの初めての投与となる臨床試験(第Ⅰ相医師主導治験)を2026年7月より開始いたしました。

背景と開発の目的

パーキンソン病(以下PD、*1)は、脳内の「αシヌクレイン(以下αSyn、*2)」と呼ばれるタンパク質が異常に凝集・蓄積し、神経細胞死を引き起こすことで発症すると考えられています(図1)。現在、PDに対する治療薬は症状を和らげる対症療法的なもの(*3)が中心であり、病気の進行そのものを止める、あるいは遅らせる根本治療薬の開発が強く望まれています。
川畑教授が開発を進める「MF1」は、神経細胞に発現してPD等の病態に関わると見られる脂肪酸結合タンパク質3(FABP3、*4)を標的とする、世界初の作用機序を持つ(first-in-class)治療薬候補化合物です。MF1はαSynの細胞内凝集体形成・細胞内取り込みと、αSyn凝集体によるミトコンドリア障害を抑止することで神経細胞死を抑制し、PD治療に寄与するようにデザインされています(図2)。実際にMF1をPDモデルマウス(*5)に対して投与した結果、PD患者と同様の運動機能障害や記憶学習障害が本モデルにおいて抑制されることを明らかにしています(図3)。これにより、PDの病態そのものに作用する新たな治療薬となる可能性が期待されています。

【図1】 パーキンソン病患者におけるαシヌクレイン病態。パーキンソン病の患者様の脳内には、中脳と呼ばれる部位に、写真AおよびBに示すような、原因タンパク質αシヌクレインが含まれる「レビー小体」と呼ばれる凝集体が特徴的に観察される。


【図2】 MF1の想定作用機序。MF1は、脳内でαシヌクレインと共凝集するFABP3(図では別々に記載)に作用し、αシヌクレインの細胞内取り込みと凝集、ミトコンドリア障害を抑制する。


【図3】 PDマウスモデル(A:αシヌクレイン投与モデル、B:MPTP投与モデル)におけるMF1の薬効。
(A)本開発治療薬MF1はPDの原因タンパク質であるαシヌクレインの脳内伝播と蓄積を抑制し、
(B)低下した運動機能を健常マウスレベルまで回復可能である。さらにMF1はαシヌクレイン投与モデル(A)およびMPTP投与モデル(B)の両PDモデルに有効であることが示された。

臨床薬理試験(第Ⅰ相医師主導治験)の概要

本試験は、日本人の健康成人男性を対象に、「MF1」を初めてヒトに投与した際の安全性、忍容性(副作用の有無や程度)、および体内での動き(薬物動態:PK)を評価することを目的に実施する、初期段階の臨床試験です。
試験は安全性を最優先とし、以下の3つのパートに分けて実施されます。
  • Part A: 健康成人男性を対象とした、単回投与試験
  • Part B: 健康成人男性を対象とした、7日間の反復投与試験
  • Part C: 少数のPD患者を対象とした、反復投与試験
※本試験は初期段階の安全性を確認するための試験であり、現段階でPDに対する治療効果(有効性)を検証するものではありません。
※本試験の詳細は、日本の厚生労働省が運営している臨床研究等提出・公開システム(jRCT、登録番号:jRCT2021260006)、あるいは米国・国立衛生研究所が運営する臨床試験データベース(ClinicalTrials.gov、ID: NCT07666022)を参照ください。
jRCT:https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT2021260006(外部サイトへリンク)
ClinicalTrials.gov:https://clinicaltrials.gov/study/NCT07666022(外部サイトへリンク)
※本試験は、医薬品、医療機器等の品質、有効性及び安全性の確保等に関する法律に基づき、独立行政法人医薬品医療機器総合機構(PMDA)への治験届の提出、および一般社団法人東北臨床研究審査機構(ACTIVATO)による厳正な倫理的・科学的審査を経て承認されています。 (登録番号:jRCT2021260006)

今後の見通し

今回の第Ⅰ相臨床試験によって「MF1」の安全性が確認された後、第Ⅱ相、第Ⅲ相試験へと進み、有効性と安全性の検証を重ねていく予定です。医薬品としての実用化(承認・発売)までには、今後10年程度の長期間の研究開発期間を要します。現在は、実用化へ向けてのスタートを切った段階です。加えて、FABP3はαSynが関与する多くの疾患に共通して発現することが示されていることから、本化合物の適応はPDに留まらず、レビー小体型認知症(*6)といった他の疾患への拡大可能性も秘めています。

用語の説明

*1 パーキンソン病(PD)
脳内のドパミン神経が減少することで、震えや動作の遅れなど運動症状を主とする神経変性疾患。

*2 αシヌクレイン(αSyn)
神経細胞に存在するタンパク質で、脳内での本タンパク質の異常な凝集・蓄積がパーキンソン病などの原因と考えられている。

*3 PD標準治療薬
パーキンソン病の症状を和らげるために一般的に用いられる薬で、代表例はL-ドパ製剤。

*4 脂肪酸結合タンパク質3(FABP3)
脂肪酸の輸送や代謝に関わるタンパク質で、神経細胞における病態形成との関連が研究されている。
<FABP3に関する論文>
脂肪酸の輸送に関わるタンパク質で、神経細胞におけるαシヌクレインの細胞内取り込みやPDバイオマーカーとの関連が研究されている。
  • Fatty Acid-Binding Protein 3 is Critical for α-Synuclein Uptake and MPP+-Induced Mitochondrial Dysfunction in Cultured Dopaminergic Neurons, Int J Mol Sci, 2019;20(21):5358–5371.
  • Using Fatty Acid-Binding Proteins as Potential Biomarkers to Discriminate between Parkinson's Disease and Dementia with Lewy Bodies: Exploration of a Novel Technique, Int J Mol Sci, 2023;24(17):13267–13279.

*5 PDモデルマウス
パーキンソン病の病態を再現するために遺伝子改変や薬剤処理で作製された実験用病態マウス。今回使用したマウスはMPTP投与マウスとαSyn脳内投与マウス。
<MPTP投与マウスの論文>
  • Inhibition of MPTP-induced α-synuclein oligomerization by fatty acid-binding protein 3 ligand in MPTP-treated mice, Neuropharmacology, 2019, 15(150) 164-174.
<αSynインジェクションマウスの論文>
  • Fatty Acid Binding Protein 3 Enhances the Spreading and Toxicity of α-Synuclein in Mouse Brain, Int J Mol Sci, 2020;21(6):2230–2249.
*6 レビー小体型認知症
脳内にαシヌクレインが蓄積して起こる認知症の一つで、幻視や認知機能の変動などが特徴。

よくあるご質問

Q.誰でもこの薬を投与してもらえますか?
A. いいえ。今回の第Ⅰ相臨床試験は初期の安全性を確かめる試験のため、厳格な資格基準を満たした健康成人男性が対象の試験となります。少数例のPD患者様への臨床薬理試験については、一部病院にて探索的に行うもので、全国から患者様を募集するような試験はまだまだ先となります。現時点で参加希望等をお受けすることはできません。

研究支援

本治験は、国立研究開発法人日本医療研究開発機構(AMED)の「橋渡し研究プログラム(シーズC(a))」における研究開発課題「レビー小体病に挑む革新的根本治療薬の開発」の支援を受けて実施しています。

お問い合わせ先

静岡県立大学 地域・産学連携推進室
E-mail: renkei(ここに@を入れてください)u-shizuoka-ken.ac.jp
電話: 054-264-5124

重要なお知らせ

静岡県立大学では、現在の募集状況や参加資格など、治験への応募・参加に関するお問い合わせにはお答えできません。
本治験に関する情報は、jRCT(登録番号:jRCT2021260006)、あるいはClinicalTrials.gov (ID: NCT07666022)に公開している内容をご確認ください。なお、各登録サイトに掲載されている問い合わせ先へお問い合わせいただいた場合でも、公開情報以上の内容(募集状況、参加可否、選択・除外基準の詳細、今後の予定等)についてはお答えできませんので、あらかじめご了承ください。

jRCT:https://jrct.mhlw.go.jp/latest-detail/jRCT2021260006(外部サイトへリンク)
ClinicalTrials.gov:https://clinicaltrials.gov/study/NCT07666022(外部サイトへリンク)

(2026年7月10日)

モバイル表示

PC表示