国際的な総合科学雑誌Natureオンライン版の特集企画 Spotlight: Precision Medicineに、薬学部の渡辺賢二教授、佐藤道大准教授らのグループが行っている研究の記事広告Tackling colorectal cancer by eliminating a gut microbeが掲載されました。記事では、大腸がん原因物質コリバクチンの機能解明および産生菌の制圧に関する最新の知見を紹介しています。
掲載記事はこちら:https://www.nature.com/articles/d42473-026-00180-8
特集のトップページはこちら: https://www.nature.com/collections/precision-medicine-spotlight-2026
以下は、本研究プロジェクトでコリバクチン産生大腸菌に特異的なモノクローナル抗体と抗体薬物複合体の開発研究に取り組んでいる大学院薬食生命科学総合学府博士前期課程2年の新貝龍旦さんと薬学部4年の山下慎ノ介さんによる本研究の説明です。
(以下の内容は、上記の記事広告の補足資料として、本研究の概要を説明したもので、本学の責任のもとで掲載をしております。)
掲載記事はこちら:https://www.nature.com/articles/d42473-026-00180-8
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以下は、本研究プロジェクトでコリバクチン産生大腸菌に特異的なモノクローナル抗体と抗体薬物複合体の開発研究に取り組んでいる大学院薬食生命科学総合学府博士前期課程2年の新貝龍旦さんと薬学部4年の山下慎ノ介さんによる本研究の説明です。
(以下の内容は、上記の記事広告の補足資料として、本研究の概要を説明したもので、本学の責任のもとで掲載をしております。)
腸内細菌叢を構成する一部の細菌が産生するコリバクチンは、哺乳類細胞にDNA二重鎖切断を引き起こす遺伝毒性物質である。コリバクチン産生菌と接触させた細胞からコリバクチン–DNA付加体が検出されたこと、またゲノム中に特異的なDNA変異シグネチャーが発見されたことから、本化合物と大腸がんとの関連が強く示唆されてきた。最近では、日本を含む国際共同研究として大腸がんを対象とした全ゲノム解析が行われ、日本人症例の半数にコリバクチンによる変異シグネチャーが存在すると報告された。これにより、コリバクチンが大腸発がんに直接的に関与することが明らかとなっている。現在、日本における大腸がんの罹患数は全がん種で第1位であり、その数は増加傾向にある。このため、コリバクチン産生菌の除菌は大腸がん予防における重要な戦略となりえるが、同菌を選択的に除菌する方法は未だ確立されていない。ピロリ菌除菌のような非選択的な抗生物質投与では、約2,500種の微生物からなる複雑な腸内細菌叢を破壊することになる。そこで我々は、産生菌特異的なモノクローナル抗体を利用することで、標的菌のみを選択的に除菌可能になると考えた。
抗体の作製は、当研究室で単離したコリバクチン高生産大腸菌E. coli–50および非生産菌のそれぞれの菌体を用い、免疫サブトラクション法により行った。その結果、コリバクチン産生菌特異的なモノクローナル抗体を獲得することに成功した。得られた抗体のアイソタイプはすべてIgMであり、そのエピトープは大腸菌リポ多糖中のO6抗原糖鎖であることが判明した。さらに我々は抗体薬物複合体 (ADC: Antibody-Drug Conjugate) の作製や免疫染色といった広範な実験への応用を見据え、O6抗原糖鎖を認識するIgGモノクローナル抗体の作製も試み、その獲得に成功した。このIgG抗体をE. coli–50培養液に添加したところ、本菌の増殖阻害が確認され、産生菌に対する中和抗体活性を見出した。続いて、このIgG抗体のシステイン残基にリンカーを介して抗生物質アンピシリンを結合したADCを作製した。得られたADCをE. coli–50培養液に添加した結果、マクロファージ細胞の存在下において、極低濃度でE. coli–50を死滅させることに成功した。
コリバクチン産生菌と大腸がんの関係はヘリコバクター・ピロリと胃がんの関係に類似している。ヒトの胃内にはほとんど細菌叢は存在しないため抗生物質による一括除菌が許容されるのに対し、腸内では有用な細菌叢への悪影響を避けるため、非選択的な除菌法は回避すべきである。今回我々は、抗体を用いたドラッグデリバリーシステムを応用し、コリバクチン産生菌への特異的な殺菌活性を示す「抗コリバクチン産生菌・抗生物質 (ADC)」の作製に世界で初めて成功した。
抗体の作製は、当研究室で単離したコリバクチン高生産大腸菌E. coli–50および非生産菌のそれぞれの菌体を用い、免疫サブトラクション法により行った。その結果、コリバクチン産生菌特異的なモノクローナル抗体を獲得することに成功した。得られた抗体のアイソタイプはすべてIgMであり、そのエピトープは大腸菌リポ多糖中のO6抗原糖鎖であることが判明した。さらに我々は抗体薬物複合体 (ADC: Antibody-Drug Conjugate) の作製や免疫染色といった広範な実験への応用を見据え、O6抗原糖鎖を認識するIgGモノクローナル抗体の作製も試み、その獲得に成功した。このIgG抗体をE. coli–50培養液に添加したところ、本菌の増殖阻害が確認され、産生菌に対する中和抗体活性を見出した。続いて、このIgG抗体のシステイン残基にリンカーを介して抗生物質アンピシリンを結合したADCを作製した。得られたADCをE. coli–50培養液に添加した結果、マクロファージ細胞の存在下において、極低濃度でE. coli–50を死滅させることに成功した。
コリバクチン産生菌と大腸がんの関係はヘリコバクター・ピロリと胃がんの関係に類似している。ヒトの胃内にはほとんど細菌叢は存在しないため抗生物質による一括除菌が許容されるのに対し、腸内では有用な細菌叢への悪影響を避けるため、非選択的な除菌法は回避すべきである。今回我々は、抗体を用いたドラッグデリバリーシステムを応用し、コリバクチン産生菌への特異的な殺菌活性を示す「抗コリバクチン産生菌・抗生物質 (ADC)」の作製に世界で初めて成功した。

左から佐藤准教授、渡辺教授、新貝さん、山下さん




