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SDGsへの取り組み:薬学部


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薬学部は1916年創立以来100年を超える薬学教育・研究の歴史をもっています。薬学部では、化学、物理、生物を基盤とした知識と知恵(応用展開能力)を持ち、生命科学を基盤とする高度の「薬学的思考力」と「倫理観」を備えた創造性豊かな人材の育成を通して、SDGsの目標達成に貢献しています。

達成目標

薬学部のSDGsの取組みの事例として、薬学部薬学科の近藤啓教授が取り組んでいる創剤技術の開発・研究について紹介します。

くすり・医薬品という言葉から多くの方は錠剤やカプセル剤といった剤形を想像することと思います。くすりの効果を示す物質を薬理活性物質といいますが、どんなに優れた薬理活性化合物が見出されたとしても患者さんをはじめとするユーザーが使用できるくすり・医薬品、つまり剤形にならなければ薬物治療は達成されません。近藤教授らは剤形に関する研究をしています。例えば、服用したくすりは胃や腸で溶けたのちに体に吸収され、病巣まで血液によって運ばれて行きます。服用後、くすりが胃や腸でどのようになっていて、どのように溶けるか、また、溶け出した後に必要な量が吸収されるか、吸収されないようであれば、どうすれば吸収されるようになるか、を明らかにすることはくすりの効果と安全性を確保するうえでとても大切なことです。また、飲みやすい剤形や効果が持続する剤形、貼り心地の良い貼付剤など、患者さんが自ら正しくくすりを服用できるよう、剤形に求められる技術についての研究を展開しています。そのため、近藤教授らが行っている剤形を創り出す創剤技術を研究する製剤学はユーザーに近い学問のひとつということができます。

図 経口投与剤形の研究対象例

これらの研究を進めていく上で、近藤教授らは様々な問題や困難に直面してきました。例えば、どんなに起こり得ると思われる事象を想定し、それらの事象について理論を構築し、分からなかった箇所を明らかにしたつもりでも、自分たちが取り組んできた課題解決策が正しいものであるかどうかは、ヒトに適用するまで明らになりません。しかしながら、ヒトが使用した際に「上手くいきませんでした」では困ってしまいます。近藤教授によると、どれだけヒトの状態を反映しているか、を常に考えながら剤形研究をするところが難しいところであり、面白いところでもある、とのことです。最近は、テーラーメード医療といって個々の患者さんの状態に応じた薬物治療の検討が進められていますが、できるだけ多くの患者さんにとって有効となるくすりが望ましいのは言うまでもありません。理想は患者さん全員に対して有益となる剤形ですが、そのためには莫大な要因を考えなければならないのは容易に類推できると思います。錠剤が大きすぎて飲めない、苦くて飲めない、貼ってもすぐはがれてしまう、といったことがないように、患者さん全員が使用できるようにすることから取り組んでいます。

剤形が果たすことのできる役割について、近藤教授が以前製薬メーカーに所属していたときの事例を紹介します。顧みられない熱帯病の一つに住血吸虫症があります。成虫が静脈内に寄生することで生じる疾患であり、主に発展途上国の熱帯地域、貧困層を中心に蔓延しており、世界中で2億4千万人が罹患していると言われています。アフリカだけで年間20万人の死者が出ていると推定されていますが、問題は小児において高い罹患率を示しているということです。実は住血吸虫症にはすでに特効薬が存在しています。1970年代に開発された薬ですが、錠剤が大きいため、小児が飲むことができません。ならば錠剤を潰してやれば小児でも飲めるようになるであろうと考え、錠剤を潰して服用させると、今度は薬が有する極めて不快な味のために小児は口に含んだ途端に反射的に吐き出してしまいます。そのため、小児は薬を服用することができず、薬物治療が達成されないことから命を落とすという結果に至ります。残念なのは薬が目の前にあるにも関わらず、小児が服用できる剤形がないために治療ができないということです。このような状況を鑑み、多くの薬に関係する企業がコンソーシアムを形成し、小児が服用できる剤形の開発に取り組んだ(現在も開発は進行中とのことです)ということがありました。剤形が果たすことのできる役割を示した好事例だと思います。

近藤教授はこれまでの研究とSDGsの目標との関連について、次のように説明しています。

1. 貧困をなくそう
貧困なくす原動力の1つは健康です。健康を保つ、また、病気になったとしても薬物治療により健康を取り戻す、とても大切なことだと思います。健康の維持・回復に剤形は大きな役割を果たすと考えます。

3. すべての人に健康と福祉を
薬物治療は特定の階級や層に対して施されるものではありません。全世界の老若男女に適用することができて初めて価値あるものになると考えます。薬物治療を可能にする剤形研究に取り組みます。

9. 産業と技術革新の基盤をつくろう
剤形の工夫により、従来では達成されなかった薬物治療が可能になります。つまり、新たな価値創造に繋がります。価値が創造されれば産業が生まれ、技術が磨かれて行き、継続的な革新がなされます。

12. つくる責任、つかう責任
何のために剤形をつくるのか、もちろん、患者さんにつかってもらうためです。そのため、剤形の製品価値は2つの側面が必要です。一つはつくり手のこだわりの機能的価値、もう一つはつかい手にとっての顧客価値です。「つくる責任、つかう責任」が反映されるこれらの価値のバランスが求められると考えています。

図 剤形の製品価値が有する2つの側面

また、SDGsの目標達成に向けた教育活動と社会活動について、次のように抱負を述べています。

4. 質の高い教育をみんなに
私の考える「質の高い教育」とは、個々人が課題を見つけることができ、その課題を解決するためにしっかりと考え、その考えを検証し、他人に伝えるべく発信することができるようにすることです。研究室の学生全員ができるようになるように頑張ってくれています。

8. 働きがいも経済成長も
将来、社会に出たとき、自分の役割を認識すること、その役割が他人とは異なるようにすることで存在意義を示すこと、また、その役割を全うすることでどのように社会貢献(経済の成長へ貢献)するかを考えるようにしてもらっています。

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